フロム・ファースト・ビル~山下和正の建築

東京・青山通りを挟んで表参道とは反対側の南青山に、赤褐色の煉瓦タイルに覆われた商業施設がある。

1976年に竣工した「フロム・ファースト・ビル」は商業空間とオフィス空間、そして住居空間の新たな複合商業施設としての有り方を示した、鉄筋コンクリート造一部鉄骨鉄筋コンクリート造の地下2階・地上5階建・搭屋1階/延べ床面積:4.905平米の建築である。歩道を歩いてゆくと、道すがら「プラダ」「カルティエ」など有名ブランドの建築を見ることが出来るが、ここから約100m先まで足を伸ばす人は少ない。道を挟んだ奥には「COLLEZIONE」(1989年竣工・設計:安藤忠雄)が見える。

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東京メトロ・表参道駅から歩いて7~8分の場所に建っている。アルコーブ的な凹凸のある煉瓦タイルに覆われた建築は通りに対して威圧すること無く、往来を自由にしている。45度のハイサイドライトが外観を特徴あるものにしている。

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上、左手が「COLLEZIONE」である。「フロム・ファースト・ビル」中央には東西を繋ぐブリッジが渡り、エキスパンションジョイントされている。建築を構成する住居・店舗・オフィスは回廊と階段、吹抜けを通して外部に開かれている。

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地下1階の中央ダブルデッキプラザから表参道より続く通りを見上げる。天井はかなり低く抑えられ、回廊やプラザ、吹抜けからヨーロッパの路地的な空間を彷彿させている。半地下的な床レベルからは視線が微妙な範囲に入る。

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1階エレベーターホールから中央デッキプラザ方向を望む。床も壁も煉瓦タイルで仕上げられている。天井は各階とも低く押さえ込まれているが、床の重なりを少しずらして造られる吹抜けにより、空間に陽と陰を生み出している。

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2階南側から吹抜けを通して階段、更に奥を見ると、回廊の形状が各階で異なり吹抜け空間に重なりの変化を与えている。回廊の照明器具(ダウンライト)は、低く抑えられた天井には全て埋め込まれ、フラットに納めている。

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2階エレベーターホールから階段・吹抜け方向を見る。煉瓦タイルに囲まれた回廊は天井が低く抑えられているのが分る。この階はおそらく2200mm前後位では無いだろうか。ホールにはゴミ箱と灰皿のボックスが置かれていた。

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3階エレベーターホール奥より吹抜け方向を見る。この階では4階、5階部分の二層分が重なり合いながら刳り貫かれた複雑な空間構成を見ることが出来る。ガラス・スクリーンがエレベーターホール両脇に囲う様に立てられている。

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3階から南側階段方向を見る。階段を支える竪壁と吹抜けを仕切る異なる各階の床と手摺壁、それらが創り出す空間は吹抜けを通して降り注ぐ光が地階まで届いている。3・4・5階は住居・オフィスにも対応可能な計画にされている。

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5階へ続く外部階段の踊り場から3・4階を見下ろしてみる。三角形のキャンティの有る回廊、用途対応が可能な3・4・5階はメゾネットで構成された住居・オフィスとして利用され、商業空間・オフィス空間・住居空間が重なり合っている。

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最上階5階のブリッジ方向を見るが、プライベート空間として構成されていた。複数の階段(3箇所)が各階を用途に合わせて繋いでいるが、室内に設けられた階段はプライベートな空間を演出するように設置されているようである。

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最上階のブリッジ手摺壁は竪スリットを入れて納められている。スリットの下部には銅板で見切りを付け、施工性・耐久性等に考慮して工事がされていたのだろうか?30年の経年変化がこの銅板の緑青から見ることが出来る。

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この「フロム・ファースト・ビル」は商業空間・オフィス空間・住居空間を兼ねた規模の大きな複合建築として当時の代表作に挙げられるだろう。この建築を生み出すまでに5年余りの時間を費やしたと言われており、企画会社、クライアント、建築家の三位一体の信頼関係が協働し、成し得た結果の建築であろう。平面図を見ると3~5階の住居・オフィスには全てにわたり吹抜け空間を設け、プライバシーを確保するためにスカイライト(45度勾配)も設けられ設計としても将来における周辺の環境変化にも対応した都市建築の1つの解答になっている。
設計者の山下和正は1937年生まれ。1959年東京工業大学工学部建築学科卒業、日建設計及び海外の建築設計事務所等に勤務後の1969年に山下和正建築研究所を設立。教職でも東京造形大学助教授、東京工業大学教授を歴任している。この「フロム・ファースト・ビル」で日本建築学会賞を受賞、代表作は「ピラミデ」「東京古書会館」「山形新幹線新庄駅舎」「文教大学湘南校舎」等。

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